2018年5月27日
中土井 僚「日々是内省」
アドラー心理学において、「課題の分離」という考え方があります。
この考え方は、何らかの問題に直面した時、それが誰の問題なのかを考え、その問題がもたらす結果を最終的に引き受けるのが自分でないのだとしたら、それを切り分けて踏み込まないことを意味しています。
だからといって、薄情なわけではなく、相手の気持ちに共感したり、相手の求めに応じて援助をしてあげたりすることは必要なことであると考えられており、相手にいつでも課題に立ち向かう上での支援をする用意があることだけを伝えて、見守るという姿勢を取ることが推奨されています。
この課題の分離が必要な理由の一つとして、アドラー心理学の中では、他者の課題に踏み込む、または自分の課題に踏み込まれることで対人関係のトラブルは起こると考えているからです。
これは本当にその通りだなと思いつつ、なかなか難しいなとも思います。
自他ともに認めるどころか、自分が思っている以上に周囲の方々はそう思っており、多分にご迷惑をおかけしているのだと思うのですが、私はかなり「押しつけがましい」ほうだと思います。
この押しつけがましさ故に、他人の課題に入り込みすぎてしまい、人間関係を壊してしまったということは、一度や二度ではないどころか、ちょっとは進歩しているものの、いまだに繰り返していたりします。
他人と一線を引く人にとってみると、「他人の課題に踏み込まないなんて当たり前だろ。何をいまさら」といわれそうです。
しかし、「課題の分離」×「支援の姿勢」というこの二つの変数があってこそ、この課題の分離にまつわるアドラーの教えが成立するという点が非常に重要だと考えています。
分離は「離れること」、支援は「近づくこと」とシンプルに考えたとき、一見矛盾して見えることが教えとして提示されているように感じます。
実際、これは一種のジレンマだと思うのですが、このジレンマに真正面から「がっぷり四つ」に組んで、向き合っている人に出会えることはそうそうありません。
このジレンマに真摯に取り組んでいる管理職の人は、上司として信頼される傾向があります。マネジメントに必要な能力は多々ありますが、私はこのジレンマに向き合う力は、マネジメント力における「十分条件」であると考えています。
この十分条件を満たせる人が少ないからこそ、組織の中ではマネジメント力不足が常態化しているといっても過言ではないと思います。
このジレンマの解決の本質とは何か?すなわち、単なる一線を引く形ではない「課題の分離」を実現しつつ、本当の親密さに満たされながら支援できるようになるために最も大切なことは何か?
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